産後クライシスとは何か?女性が感じる恐怖を理解しよう
2023年5月17日産後クライシスとは?
産後クライシスを乗り越えられないと、夫婦関係に大きな傷が残るかも…。
出産を契機に、夫婦仲が急速に悪化する「産後クライシス」。
特に出産直後から2歳までの育児期間において、この現象が強く見られます。
2011年にベネッセ教育総合研究所が配偶者への愛情の変化を追った調査では、「配偶者といると本当に愛していると実感する」と回答する人が、以下のように変化しています。
妊娠期には夫婦ともに74.3%が愛情を実感していたのが、夫が2歳児期までに51.7%まで減少しています。
また、妻に至っては、半分以下の34.0%まで減少。
特に0歳児期における妻の減少度は大きく、約3割の女性がこの時期に愛情を実感しなくなっています。
加えて、この0歳児期における女性の不満は強く、セックスレスや離婚にまで及ぶ場合もあります。
本来、新しい命が誕生することは大きな喜びのはず。
しかし、それが夫婦仲を悪化させてしまうという産後クライシス。
この記事では、なぜ産後クライシスが起きてしまうかを、人類の進化という観点から解説します。
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産後クライシスの症状
女性が産後クライシスになると、心身に不調や不安感を覚えるようになります。
その代表的な症例は、以下の通りです。
気分の落ち込みや涙もろさ
出産後のホルモンバランスの乱れや疲労、不安などにより、精神が不安定になります。
また、過度に泣いたり笑ったりすることが多くなったり、自分自身の感情変化についていけなくなったりします。
子供や夫に対する愛情や関心の低下
これまで愛情深く接していた子供や夫に対して、急に以前のような愛情や関心を感じられなくなります。
また、子供に対して冷淡になったり、夫との接点を拒絶する場合もあります。
子どもや自分に対する罪悪感や自己嫌悪
女性が子どもを産んだことや育てることに対して罪悪感を感じるようになります。
また、自分は母親失格だと思ったり、自分の容姿や能力に対しても否定的に感じる症例もあります。
不安や恐怖感、パニック発作
子供や自分の健康や安全を過剰に心配して、急に不安定な気持ちになったりします。
また、突然の動悸や、死ぬかと思うようなパニック発作を引き起こすケースもあります。
睡眠障害や食欲不振
育児による疲労などにより睡眠時間が減ったり、よく眠れなくなる症状が発症します。
また、食事をする気力がなくなったり、食べ物自体に興味を失うケースもあるようです。
集中力や判断力の低下
過度の疲労やストレスによって、頭の回転が鈍り、物事に集中できなくなります。
また、日常的な判断や決断ができなくなったり、ミスが頻発するようになります。
女性が直面する出産の恐怖
出産は女性にとって喜ばしい出来事であると同時に、恐ろしいことでもあります。
その大きな理由は、人間にとって出産は生命をかけた闘いだからです。
そもそも、人間は数多く存在する生物の中で、極めて出産にリスクを伴う生き物です。
2020年の日本における妊産婦の死亡率は、約35,714人に1人。
これは1950年の約568人に1人と較べると、約63分の1まで低下しています。
今では、現代医学の発達により女性の出産における生命リスクは、他の生物と較べても決して高くはありません。
ですが、私たちの本能は、今でも狩猟時代を前提として機能しています。
つまり、出産における本能の恐怖感は、今でも狩猟時代からほとんど変わっていません。
それでは、狩猟時代における妊産婦の死亡率はどうだったのでしょうか?
残念ながら、狩猟時代の死亡率を推測する資料は残っていません。
ですが、現在でも出産環境の良くないアフリカのサヘル以南の地域では、出産による死亡者が16人に1人という状況です。
また、平安時代ごろの日本のある書物には、10人に1人が亡くなると書かれています。
つまり、狩猟時代には10人に1人以上の女性が、出産で命を落とす状況だったということ。
それほどの恐怖が、今でも女性の本能には刻まれているのです。
人類は一人で子育てする生物ではない
もう一つ、産後クライシスに大きく影響しているのが、子育て環境です。
狩猟時代において、人間は集落で生活する生き物でした。
先ほど解説した通り、当時は女性が出産で生命を落とす可能性がとても高い状態。
そのため、生まれた子供を育てるのは両親だけでなく、集落全体としての大事な使命でした。
この当時は現代のように「家系」という概念がなく、子供は集落の女性が連帯して育てたと言われています。
そのため、人類は子育てを一人の母親だけで負担するという本能を、ほとんど持っていないのです。
人類の歴史は、およそ200~300万年前と言われています。
その歴史の中で、「家系」という概念が生まれたのは、農耕が始まった約1万年前。
つまり、それまでは集落で子供を育てていたので、女性が一人で育児をするのはかなりのレアケースでした。
そして、農耕が始まってからも、育児は家系の中で協力して行われていました。
また、育児のメインは家系であっても、近隣がサポートするのもごく当たり前。
そう考えると、社会的に母親が一人で育児するようになったのは、核家族化と言われるようになった1940年代からとも考えられます。
この急激な変化に、母親の本能はおそらく今でもついていけてないでしょう。
それが、育児を一人でこなそうとするときに、とてつもない恐怖を感じる原因かもしれません。
産後クライシスで起きる怒り
このように、女性が一人で出産・育児を迎える時は、本能がとてつもない恐怖を感じています。
現代で、この女性が真っ先に精神的サポートを求める相手は、パートナーです。
ですが、女性がこの恐怖にさらされている時、パートナーからサポートしてもらえなければどうなるでしょうか?
例として、男性が会社経営していた時を考えてください。
会社の資金繰りが行き詰まり、倒産の瀬戸際に立っていたとします。
実は、私自身もこの経験がありますが、毎日、目を覚まさなければと思うような大変な日々でした。
もし、男性がこのような窮地に追い込まれた時、パートナーから「私は関係ないから巻き込まないで」と言われて、全くサポートしてもらえなければどう感じるでしょうか?
そして、なんとかその危機を一人で乗り切って、会社が順調になった。
そうすると、パートナーが何事もなかったかのように、結婚生活を送ろうとする。
もし、このような態度をとられた時、あなたはパートナーを許せますか?
実は、これと同じような感情が、女性に起きている状況なのです。
産後クライシスを男性が予防する方法
女性は出産と一人での育児に、とてつもない恐怖を感じている。
そして、現代ではそのサポートをできるのは、パートナーだけという状態かもしれません。
だからこそ、男性は女性のサポートを全力で行いましょう。
特に出産から0歳児の間は、その恐怖がピークを迎える時期。
この時期は、ある程度仕事を犠牲にしてでも、女性をサポートすべきです。
もちろん、仕事で大変な状況というのは、私もそうでした。
ですが、この出産から0歳児の間、女性はそれを上回る恐怖に直面しているはずです。
だからこそ、女性はこの時期にサポートしてもらえないと、男性に対して憎しみすら抱くようにもなります。
その割合が、冒頭の調査から推測すると、約30%の女性に起きているのです。
今のパートナーと長く仲良い関係を続けていきたいのであれば、せめて出産から0歳児の間は育児優先で対応してください。
産後クライシスを女性が乗り越える方法
女性が産後クライシスを乗り越える一番の方法は、パートナーの助けを得ることです。
ですが、男性に助けを求める時に、感情優先で話すのは得策ではありません。
おそらく、どんなにあなたの感情を投げかけても、男性には50%も通じません。
なぜなら、男性の本能は出産や育児に対する恐怖感を、それほど持っていないからです。
狩猟時代において、男性はほとんど育児に携わっていませんでした。
その当時、食料を確保することは、現代と比べ物にならないほど大変な仕事。
そのため、ほとんどの男性は夜明けとともに集落から出ていきました。
そして、一日中動き回った身体は、夜になるともうクタクタ。
そこでしっかり睡眠を取らないと、翌日の食料が確保できなかったのです。
それでは、どうすれば男性に、女性の恐怖を伝えることができるか?
それには、この記事で解説した内容を、分かりやすく論理的に話してみてください。
私が産後クライシスにおける女性の恐怖を調べたとき、何が男性に置き換えられるかと必死で考えたのが、会社の倒産危機でした。
私の人生で、生命を断つことを考えたのは、この1回のみです。
そのくらい大変な恐怖と闘っていると、パートナーに伝えてみてください。
それでも、パートナーが理解してくれないのであれば、もう第三者に相談してみましょう。
産後クライシスに負けないで!
ここまで、産後クライシスにおける女性の恐怖感について解説しました。
私はもともと、女性の出産育児が大変なものだとは考えていたつもりです。
その上で、子供が生まれたときは、頑張ってサポートしたつもりでした。
ですが、人類の歴史や脳のしくみを学ぶうちに、女性の出産と育児がどれほど大変なものかというのを、改めて知らされました。
その上で、当時の認識が、まだまだ甘いものだったと痛感させられています。
私たちの本能は、いまだ狩猟時代からほとんど変化していません。
そして、現代の社会環境と関係なく、本能は狩猟時代のまま機能しています。
この状況から考えると、現代の出産と育児の環境は極めていびつな状態です。
だからこそ、男性の方は女性の出産と育児を可能な限りサポートしてあげてください。
そして、女性の方は、男性が仕事で窮地に陥っている時は、同じくらいの恐怖に直面していると考えてあげてください。
お互いに大変な時期を支えあえる、良いパートナー関係を築いていきましょう。
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