母親だけの育児は異常事態?子育ては一人でやるものではない!
2023年6月4日母親だけの育児は当たり前なのか?
母親だけの育児は、自然なことなのかな?
私が女性の出産に関心を持ったのは、夫婦の関係を学んでいく中でのこと。
よく「出産を契機に妻が変わった」という意見の理由を、調べてみたいと思ったからです。
自分なりに調べて分かったのですが、女性にとって出産はとても危険性が高い出来事です。
ある説では、平安時代には10人に1人の母親が、出産で生命を落とすという記述があったそうです。
それほど、危険性が高い出産ですが、ある時、ふと疑問が浮かびました。
最近では少子化が叫ばれていますが、私の親世代であれば3人くらいの子供がいるのは、さほど珍しいことではありませんでした。
10人に1人が亡くなるほど、危険性の高い出産。
当然、母親の身体的な負荷はかなり大きいはずです。
しかし、そんな状態の母親が一人で子育てするのはおかしくないか?
生物として、それは矛盾しているのでは?
私が子供時代の日本では、核家族化が進み、母親に育児負担が集中していました。
育児は母親がするのが当たり前という風潮があり、私もそれを当然だと思っていました。
実際、子供時代に父親や他の人との接点は、ほとんどありませんでした。
父親が外で働き、母親が家を守る。
それが人間として当たり前だと思っていました。
しかし、よくよく調べてみると、それは当たり前ではありませんでした。
むしろ、母親が一人で子育てするのは、ヒトにとっては異常事態だったのです。
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母親だけの育児で起きる問題
母親だけで子どもを育てることは、大変な責任とストレスを伴います。
そのため、母親だけの育児では、様々な問題が発生します。
その中でも、母親の精神に大きな影響を与える問題は、以下の3つです。
①育児ノイローゼ
育児によるストレスが溜まり、気分が落ち込んだりイライラしたりする状態です。
不眠や食欲不振、自己嫌悪などの症状が現れることもあります。
育児ノイローゼは産後うつとも呼ばれ、出産後の急激な女性ホルモンの変化や慣れない育児のプレッシャーによって引き起こされます。
②孤独感
子どもとだけ接触する時間が増えて、外部との接点が減ることで孤独を感じる状態です。
パートナーや親族、友人など、身近に相談できる人がいないと、症状が深刻になる場合があります。
ある調査では約8割の女性が孤独感を抱いているという結果がでています。
参照:「8割以上の母親が「子育ての孤独」を実感。にぎやかなのになぜ孤独に?折り合いのつけ方は?」
③産後クライシス
出産後に女性がパートナーに強い不満を抱き、夫婦仲が悪化する現象です。
産後クライシスの原因には、育児への負担や不安、父親の育児への関与や理解度、家事分担やコミュニケーション不足などがあります。
産後クライシスを回避するには、夫婦での話し合いや専門家によるサポートなどの方法があります。
ヒト以外の霊長類の子育て
そもそもヒトは生物として、どのように子育てするのが自然な状態なのでしょうか?
それを知るために、まずはヒト以外の霊長類について調べてみました。
霊長類はヒトをはじめ、サルやオランウータンなどの仲間です。
ここでは主に、ニホンザルとチンパンジーについて解説します。
参照:「霊長類としてのヒトの子育てを考える」
ヒト以外の霊長類は、主に母親一人で子育てします。
そのため、母親の育児負担が大きいため、次回の出産は子供が母親から自立し始めてからになるそうです。
子供が自立する目安となる離乳期はニホンザルは生後1年、チンパンジーでは4~5年。
そのため、ニホンザルの出産間隔は2年、チンパンジーでは5~8年かかるそうです。
まずは生まれた子供が自立するまで育てる。
そして、育児の負担が小さくなったところで次の子供を出産する。
この出産間隔は、母親の負担を考えればとても理にかなっています。
ヒトは共同で子育てする?
一方、ヒトの場合はどうでしょうか?
ヒトの場合は、子供が乳離れしたとしても、その時点では一人で生きていくことができません。
ある程度、子供が自立できることを考えれば、10年以上は必要でしょう。
その一方で、ヒトの出産間隔は他の霊長類と較べて、明らかに短くなっています。
昔の出産間隔を知ることはできませんが、WHOのガイドラインは最低でも18カ月間、理想としては24カ月間空けるよう推奨しているそうです。
仮に24か月としても、これは他の霊長類に比べて、とても短い間隔です。
では、なぜヒトはこうした出産間隔になったのでしょうか?
それを成立させた条件とは、いったいどのようなものだったのでしょうか?
一つの仮説として考えられているのが、ヒトは共同で子育てをしてきたということです。
ヒトにはこの仮説を裏付けるような、他の動物では滅多に見られない現象があります。
それが「おばあさん仮説」です。
霊長類の多くは、死ぬまで閉経せず子供を産み続けるそうです。
閉経後も長く生き続ける「おばあさん」という時期は、ヒト以外には存在しないとも言われています。
それでは、なぜ、ヒトにだけおばあさんという時期が存在したのか?
それが、子育てを手伝うという役割を担っていたからではないかと考えられているからだそうです。
母親だけに育児を任せてはいけない
ヒトは他の霊長類と異なり、集団で育児をするという本能があるかもしれません。
そのため、ヒトは200万年とも言われる歴史の99%以上の期間、集団で協力して子供の世話を分担してきました。
しかし、近代社会では核家族化が進行し、母親が一人で育児をしているのが当たり前と思っている風潮があります。
ですが、これはヒト本来の生活様式から考えると、とても異常な事態です。
母親だけに育児を任せると母親は肉体的にも精神的にも疲弊して、様々な問題が発生してしまいます。
このような問題を回避するには、育児はヒトの本能に従って集団で行うべきかもしれません。
母親を育児から守れる人とは?
母親は、子どもを産み育てるという重要な役割を担っていますが、その負担は軽くありません。
それでは、母親を育児から守るためには、どのような人が必要なのでしょうか?
ここでは現代社会において、母親の育児負担を軽減することができる人の特徴や役割について考えてみます。
①父親
核家族化している現代において、母親の最も身近なパートナーは父親です。
まずは何よりも、父親の育児参加が大切です。
父親が育児に参加すれば母親の負担軽減だけでなく、自分自身も子供との絆を深めることができます。
実際、父親は育児に携わる時間が長くなるほど、子供に愛情が湧くシステムを持っています。
これは育児をすることで、父親の脳内でオキシトシンというホルモンが分泌されるためです。
このオキシトシンが多く分泌されるほど、子供への愛情を強く感じるようになるでしょう。
しかし、父親は本能的には育児に向いていない習性を持っているのも事実です。
例えば、父親は母親よりも子供の泣き声に敏感ではなかったり、子供のニーズを読み取る能力が低かったりします。
これらは、ヒトの進化や社会の歴史によって形成された性差です。
この性差については、父親だけでなく母親も理解しておいた方が良いでしょう。
そうしないと父親の育児に対して「何で気づかないの?」「何でできないの?」という不満が高まり、不仲の原因になるかもしれません。
パートナー同士がお互いの特性を理解して、協力して育児できるようにしていきましょう。
②祖母
仮説ではあるものの、祖母にはヒトとして育児を手伝うという役割を持っているようです。
つまり、祖母が孫の育児に参加したがるのは、本能の働きかもしれません。
ヒトとしての育児を考えるならば、能力的には祖母に協力してもらうのが一番有効と言えます。
しかし、祖母が育児に参加することは、必ずしも良いことばかりではありません。
祖母と母親の間では、子育ての方針で食い違いが発生するからです。
例えば、祖母は昔ながらの方法で子どもを育てたいと思うでしょう。
ですが、母親は最新の情報に基づいて子どもを育てたいと思うかもしれません。
このような場合、祖母と母親は対立してしまいます。
この状態は、子どもにとっても良くない影響を及ぼす可能性があります。
そこで、母親と祖母は適度な距離感をお互いに図っていくことが大切です。
祖母は、母親の意見を尊重し、必要な時だけ助言や助力をするのが良いでしょう。
また、母親は祖母の経験や知恵を尊重し、感謝の気持ちを持ちましょう。
③周りの人
母親の育児を助けるには、周りにいる人たちの理解がとても大切です。
本来、母親が一人で育児をするのは、ヒトの生活様式に反しています。
ヒトの子供は非常に未熟で長期間の世話が必要です。
そのため、ヒトは集団で育児をするという本能を持っていて、子供は社会全体として育てるのが自然な形です。
しかし、現代では核家族化や個人主義が進み、母親に育児の責任が過剰に押し付けられるようになっています。
例えば、人の多い場所で子供が泣いていると「母親なんだから、ちゃんと子供の世話をしろよ」という心無い発言をする方がいます。
ですが、子供の世話を母親だけがするという考えは、ヒトの本能的には誤りかもしれないのです。
そもそも、母親だけの育児はヒトとしてオーバーワークです。
だからこそ、周りの人は、母親に対して無理な要求や批判をしないことを意識する必要があります。
周りの人は、母親や子供に対して寛容な気持ちを持つように心がけるべきです。
そして母親や子供が困っているときには、声をかけたり手助けしたりして、少しでもサポートしてあげてください。
そういう小さなサポートの積み重ねが、母親を育児から守る方法です。
みんなで母親をサポートしよう
母親は子供を産み育てるという重要な役割を担っていますが、その負担は軽くありません。
そして、ヒトにとっては、社会全体として子供を育てるのが自然な形です。
特に少子化が進む日本では、子供は社会の宝と言っても過言ではありません。
現代の家族制度は、様々な良い点があるものの、ヒト本来の本能とは大きな食い違いを起こしています。
その食い違いをきちんと理解できれば、きっと良い解決方法を見出すことができるはずです。
母親だけが育児するのは、ヒトとしての異常事態である!
そういう認識を深めて、ぜひ、身近で育児している方々をサポートしていきましょう。
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